永久に欠く

 

欠損歯、というものをご存知だろうか。

 

この言葉を耳にしたことがない、という人はそもそもこれが何を意味するものなのか知る機会もないと思う。

聞いたことがあるという人は、私と同じ当事者かもしれないね。

 

欠損歯とは、永久歯が生えてこない歯のことだ。

私の場合、左右の上の歯が一本ずつ、永久歯が生えてこなかった。

別にいつまで経っても「生えてこないなぁ」とぼんやり感じていたわけではなく、レントゲンを撮ったら下に控えている歯がなかった、という時点で事前にわかっていたことだった。

 

永久歯が生えてこないということは、3歳くらいの時に生えた乳歯のまま過ごさなければならない。

なのだが、それがなかなか難しい。

歯医者さん曰く、永久歯は6年かけてカルシウムを蓄えるが乳歯は3年ほどで生えてきてしまうため、どうしても永久歯に比べて脆く、虫歯になりやすいらしい。

かくいう私も、左の上の欠損歯は小学校高学年の時に割れてしまった。欠けたとか、そういうレベルではなく見事に "割れた"。生えているのに縦にパッカリと割れて、かなり焦った記憶がある。慌てて駆け込んだ歯医者さんに抜いてもらってから、インプラント等の処置もせずに抜けたままにしていた。

隙間はだいぶ埋まってきたが、隙間が埋まるということは、生えている歯がその隙間に沿って寄ってくるということ。現に、前歯の中心が若干ズレた。歯並びで悩んだことはなかったけれど、この中心のズレは意識すると気になり出してしまう。

 

 

もう片方の右上の欠損歯は、歯が割れた頃と同じくらいの時期に結構な虫歯になった。それゆえ、銀歯を被せていた。思いっきり笑うとキラッと見えるくらいの位置だったので、写真にたまに写り込むと少しブルーになった。それでも、銀歯の下の乳歯がまだ生きていたので、これは生かす方向にしましょうというのが地元の歯医者さんの意向だった。

 

去年引っ越して、地元の歯医者さんに通うのが難しくなった。初めて通った歯医者さんを変えるのは怖かったが、色々と調べて、清潔感が溢れ出ていた最寄駅前の歯医者さんに変えた。

ホテルみたいな内装、それぞれの診察台が壁で仕切られていて、そして設備がたぶんかなり新しい。

うおぉ、、、と感動しながら撮ったレントゲンをみた先生は、真っ先に「ここをどうにかしましょう」と一つ残った欠損歯を指さした。

乳歯は根っこが自然に溶けてしまうこと、銀歯の下の乳歯もだいぶ溶けていること、このままだと抜けてしまうことを教えられ、インプラントを勧められた。

ずーーっと銀歯の部分に対して違和感、というか異物感、を感じていた私は、もうここを見切ってしまえば気にならなくなるのか、とインプラントを入れることを決意。医療費控除等を考慮して年明けに入れることにした。インプラントは保険適用外なので、、、

 

年が明け、そろそろ歯医者の予約をしようかなぁと思っていた火曜日。右上の欠損歯のあたりでものを噛むと痛いなぁという感覚が少しずつ強くなり、やがて何もしなくても痛むようになった。どういうこっちゃと帰宅してから触ってみると、グラグラしていた。

もうかなり限界を迎えているらしい。タイミングがすごい。

火曜は休診だったので、翌日慌てて歯医者を予約。仕事の関係で日曜の昼に決まった。

それまでは耐えられるだろうと思っていたけれど、ずっとある右上の違和感、10年ぶりくらいの歯がグラグラしている感覚、それら全てが気になってずっと舌で触ってしまい、日に日に揺れが大きくなっていく。

歯を磨くにも痛いし、もちろんご飯も左でしか噛めない。金曜には元にいたポジションに収まりもしなくなった。

何に対しても集中ができない。

もうこれは、一思いにいってしまおう。

そう思い立って、家に着いてから抜こうと思いながらもマスクの下では舌でずっといじっていた。

すると、

ころん

とあっさり抜けてしまった。帰りの電車内で。

これは、、、、

どうにもできないぞ、、、、

しょうがないからずっと口の中に入れたまま帰宅。帰宅即出した。銀歯は、10年以上使っていたにも関わらず綺麗だった。すごい。

抜けた、と思っていたのだが、根っこがなぜか残っている。今度はそれが気になる。

日曜に歯医者に行くと「割れちゃいましたね〜」と言われた。割れたのか、これ。

早めにやっちゃいましょうと言われ、いつが空いているか聞かれてあれよあれよと言う間に翌日の夕方に予約、インプラントのボルト埋め込み手術が決まった。

 

え、心の準備できてないのですが。

手術って生まれて初めてかもしれない。

 

あれよあれよという間に当日になった。

シャワーキャップのようなものを被せられる。ドラマの手術のシーンでよく見る、電気が何個もついている丸いライトが眩しくないように、とアイマスクをつけられた。全然眩しさは感じなかったけれど、ライトの熱はすごい感じた。

まず麻酔をされたが、こういうのは麻酔の注射が一番痛いまである。好きな俳優が歯医者の麻酔が結構好きと言っていたが、やはりあれだけは共感できない。痛い。

でもその麻酔のおかげで、残った歯を抜くためにやりたい放題ガチガチやられても、ボルトを埋め込むのにガガガガやられても、少しも痛くなかった。

なんなら全然関係ない、先日行ったムーミンバレーパークとムーミンの物語に想いを馳せていた。なんで?

 

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(ムーミンバレーパークのムーミンの家)

 

歯を抜く作業が大半で、ボルトを埋め込むのはあっという間だった。合計30分くらい。

ガーゼを30分噛んでくださいと言われ、治療箇所にあてがわれる。

「ありがとうございました」と言いたかったが、ガーゼを噛んでいるためフゴフゴしてしまった。

 

 

「抜糸の予約を取っていませんでした」と受付の方に言われ、1週間後の希望時間を尋ねられる。「いつが空いてますか?」と聞いたのだが、ガーゼを噛んでいるため「朝は空いてますか?」と聞こえたらしく、朝イチの時間になってしまった。

 

1週間後に抜糸をして、そこから2ヶ月ほど、骨にボルトを定着させる。

帰り際に撮って見せられた新しいレントゲン写真では、しっかりとボルトが埋め込まれていた。

 

とはいえ、一番大きい作業が終わった。

あとは型を取ったりするだけらしい。

 

出された抗生剤と痛み止めを忘れないように飲まなきゃなぁと思いつつ、腫れ防止のために頬に冷えピタを貼った。

 

聞きそびれたけれど、これいつご飯食べていいんだろう、、、、