二人で煮込んで味わって

 

人生で一度だけ、アコギ一本での弾き語りを人前で披露したことがある。短かったバンドサークル生活の、本当に一瞬。一人で弾き語りなんて、大学で始めたてのギターだったし、恥ずかしくて一生無理だと思っていた。でも、あの曲を聴いた時に、なんだかこれを一人でやらないと後悔するかなと思った。

藤原さくらの『Soup』

当時やっていた月9ドラマの劇中に登場する曲だった。ドラマのあらすじは省略するけれど、主人公が親友の結婚式のために書き下ろして披露する、という設定の曲だ。「二人で生きていく」ということに関して、色々な表現を用いながら、共に人生を歩んで行く相手に語りかける歌。

なんであの曲を歌いたくなったのかは正直よくわからないけれど、今でも好き。カラオケでもよく歌う。

私の結婚に対するイメージって、ひょっとしたらこの曲に結びついているのかもしれない。

 

 

先日、中学の友人の結婚式の二次会にお呼ばれした。友人と呼ぶべきか、親友と呼ぶべきか、喧嘩友達と呼ぶべきかわからないところではある。

私よりも生まれるのが一日だけ早かった彼女。

吹奏楽部の同期で、2人で同じパートに配置された。中学から引っ越してきた子だった。

私はあまり友達と喧嘩をしない。喧嘩という選択をする前に離れてしまうからだ。そもそも咄嗟に怒れないので、喧嘩をする前に話題が変わる。話が終わった頃に自分が傷ついているのを感じて、それが積もるといきなり相手と距離を置いてしまう。相手からすると謎でしかないと思う。

ただ、彼女とだけは話は別。人生で一番喧嘩をした相手と言っても過言ではない。中学という多感な時期。部活という閉鎖的な世界。の中でもさらに閉鎖的な同じパートという関係。ただでさえ完全に火薬庫のような環境なのに、もっと最悪なのがお互いにかなりの負けず嫌いだったこと。朝練で自分より早く彼女が来て練習している姿を見ようものなら、翌日もっと早く来て練習する。その翌日同じ時間に行くと彼女がすでに練習をしていて、、、というループが発生したこともあった。

本気でお互いを嫌い合っていたことすらある。先輩のプレゼントを買いに行くのに渋々2人で出かけて、終始無言だったことも。

それなのに、気づけばなんか仲良くなっていた。お互いに言いたいことを言える関係になった。角と角は、ぶつかり合えば丸くなるのだ。3年になる頃には「あの時お前のこと嫌いだったわw」と言い合うほどに。

ぶつかり合って仲良くなれるもんなんだなぁと当時の私は感心したのだが、その方法は誰に対しても使えるわけではないというのはその後の人生で痛いほどに理解する。

それくらい、喧嘩もしたし仲直りもした。

 

と、ここまでなら割と綺麗事で片付く話かもしれないけれど、それだけでは終わらない。

別々の高校に通って、私はそのまま大学に進学した。彼女は絵を描くことが好きで、美大に合格するために何年も努力を続けた。

私は大学を卒業して院に進むことを選択。ちょうどその頃彼女は美大入学を果たした。

なんとなく、色々なタイミングがズレた。お互いに全然知らない友達を作り、全然知らない環境の中で生き、すれ違うことが増えた。

元々人との壁が薄い、というか低い彼女は、地元でのバイトをきっかけに中学の頃あまり話さなかった同級生達とも仲良くなっていった。

人との関係をきっちり区切っていってしまうところがあり、地元の同級生たちに対して少し苦手意識があった私にとって、それはかなりの衝撃だった。

あぁ、変わってしまったんだな。寂しいな。

そんな気持ちのもと、地元の大人数の飲み会に彼女から誘われることもあったけれど、行きづらくて断り続けてしまった。

なんとなく距離を感じていた頃に、彼女は唐突に結婚することを決めた。仲のいい人が結婚したのは初めてだった。かなり驚いた。

久しぶりに彼女に会って話を聞くことになった。久しぶりに会うと、やっぱあんま変わってないなと気づく。確かに変わった部分もあって、でもそれはお互い様で、距離を感じていたのが少しバカらしくなるような気すらした。一方的に感じてないで、あの頃みたいに話せばよかったのにね。

結婚に関しても、出会いやら馴れ初めやらを聞いた限り、お相手はしっかりしたいい感じの人だった。そういえばこの子、私とは対照的に見る目があるんだったな、、、

結婚式の招待状が届いて、初めて返信を書いて、二次会の会場に移動するのを手伝う役を任命された。ちょうどその頃、コロナが世界をぶん回し始めた。

 

二度、式が延期された。

その後、親族だけで行うことが決まったと伝えられた。

どれくらい悩んだんだろうなぁとか、大丈夫かなぁとか思いつつ承諾し、数ヶ月経った。

結婚式の日程が決まり、その後の二次会に来ないかと声をかけられた。行きますと返事をした。

 

会場に着くと、思っていたよりもかなり人数が限られていたということに気づく。私、彼女の選ばれし友人のうちの一人なんだ、、、、と謎に感動した。

旦那さんと一緒に入場してきた彼女は本当に綺麗で、ドレスもかなり似合っていて、何よりニコニコ幸せそうで。なぜか私が少し照れてしまった。本人を前にしても、ちゃんとした気の利いたことを言うのが恥ずかしくて軽口を叩いてばかりになってしまった。子供だな〜、、、というわけでここに記しておこうと思う。

 

式、開催できてよかったね。本当おめでとう。

本当に綺麗だったよ。呼んでくれてありがとう。

二人が歳をとっても、皺になっても、一緒にいられる『Soup』のような関係でありますように。

 

 

私ともまたこれからも喧嘩しようね。

それで仲直りしようね。

 

ていうかサークル引退する時に描いてもらった似顔絵の報酬の海鮮丼、まだご馳走してないね?!?ごめん早急に会おう。