店じまい競争

 

一年半くらい前にこの町に引っ越してきてから、ずっと閉店セールをやっているブティックがある。店頭のショーウィンドウに飾られているマネキンは季節ごとに律儀に着せ替えられ、ついに再びの夏仕様になった。相変わらずショーウィンドウには「閉店セール」のシールが貼られたままではあるけれど。「この店が閉店するのと、私がこの町からでるの、果たしてどっちが先なんだろう」と思いながら店の前を通り過ぎるのが、私の日常だった。

この私の脳内だけで繰り広げられていたプチ競争、2回目の夏についに決着がつきそうだ。

私の異動が決まったのだ。入社3年目。早めといえば早めだが、妥当といえば妥当。場所はかなり遠い、縁もゆかりもない土地。縁とゆかりって漢字は同じなのに何が違うんだ?というのは置いておいて、思っていたよりも遠い場所に決まった。この町にいられるのは残りおよそひと月。驚きの急展開である。

 

いや、驚きというのは嘘かもしれない。異動通知がされる一ヶ月前くらいから、私の中で色々な心境の変化がありすぎた。人間関係があらゆる面で片付いていき、中には縁が切れた人もちらほらいる。もうなんか疲れたし、ここらで異動してどこか知らないところに行けたらいいのにナァ〜〜とか呑気に思っていたら本当に異動だった。なんだこれ。そこからすごい勢いで人生が回り始めている。ちょっと怖い。タイミングってこういうこと?土地に呼ばれている気さえする。スピリチュアルか?

 

異動が決まってからの日々はかなり目まぐるしく、先のことは全然決まっていないのに予定がどんどん埋まっていく。今月頭に異動の本人通知がされ、友人たちに異動します!と宣言してから、色々な人がありがたいことに会おうとしてくれるがゆえだ。ありがて〜〜〜。どこかがダブルブッキングしていそうで怖いというのが正直なところではあるけれど。

というかまだひと月あるし〜という心構えなので全然準備も始まっていない。社宅の申請をした程度。つまり家も決まっていないのだ。ノープランがすぎる。

 

とはいえ心が躍っている面もある。やりたい仕事ができる可能性も広がっている。全く知っている人がいない土地に行くのって実は初めてなのだが、友人作りなどに苦労をした覚えはそんなにないのでその辺りの心配はあまりしていない。新たな出会いか〜〜〜緊張はしちゃうけれど。あと、車の運転はできるようにならないといけないな〜〜。どペーパーを卒業するいい機会かもしれない。今ここにいる仲の良い友人たちも、きっと私から縁を繋いでいけば切れることもないと思っている。臆すること、なにもないんじゃない?

 

ひとつ心残りなのは、この町を出て行くこと。引っ越してきてから一年半くらいしか経っていないけれど、かなりこの町が好きな私がいる。何もない、と言われている最寄駅ではあるけれど、なんとなく雰囲気が好きだった。美味しいご飯屋さんもたくさんある。というかまだまだ気になっているけど行けてない店もたくさん。線路を挟んだ逆側の方面もまだ全然開拓できていなかった。引越しまでにどれくらい行けるだろう。お気に入りの店にもまた行きたいし、一人でも外食が多くなってしまいそうな予感がする。家計簿、今月はどうせ赤字なのでつけるの怖いなぁ、、、部屋もいくつか不満点はあるけれど、トータルで考えれば結構気に入っている。もう2年くらいは住みたかったなぁ。本当に住みやすくて気に入っている町なので、すごく寂しい。もういっそ町ごと引っ越したい。バスの路線とかも含めて周辺地域もまるっと。ダメですか?そうですか、、、

 

残りひと月。怒涛のひと月になりそうだけど、まぁ何とかなるやろ、とも思っている。私は夏休みの宿題は最後にまとめてやる派ですし。提出を逃したこともないので。ピースピース。

 

、、、とかいって全然実感湧いてないんですけどね?!?来月にはこの町にいない?!?!ヤバすぎるな?!?!?!

 

 

さて、今のところ「私が町を出て行くのが早い」のが優勢ではある。ひと月で例のブティックの閉店が追い上げてくるのか、終盤のデッドヒートはあるのか、乞うご期待。