薄く硬く、そして脆い

 

スマホの画面が割れた。正しく言えば、スマホに貼っていたガラスの保護フィルムが割れた。そこまで大掛かりに割れたわけではないし、まだ使えるからなぁと思って変えずにいた挙句、積み重ねでどんどん増えていったひび割れ。右下の角、その少し上の端、そして上部に稲妻のように入った細いひび。その3箇所に加えて、左の端もひびが入った。

画面が全く見えないというわけでもないけれど、最近なんかいいこともあんまりないし、変えたら何かしら運気が上向きになったりするんじゃないかと淡い期待を込めて電気屋さんに向かった。

 

とはいえ、私は画面の保護フィルムを貼ることがものすごく嫌いだ。できればやりたくない。思い返せば、中学の頃に英検準二級合格のご褒美に買ってもらったWALKMANの保護フィルム貼りで大失敗したことから、この苦手意識は始まっていると思う。そんなに大した話ではない。YUIがCMをやっていた頃のピンク色のWALKMANは私の念願で、意気揚々と箱を開けて保護フィルムを貼ろうとした。カーペットの上でやろうとしたのがよくなかったと今になれば思う。保護フィルムの上に、埃が乗った。小さいカーペットの毛。それをティッシュでとろうもした。ティッシュティッシュで。

その後のことは恐らく容易に想像ができると思う。やっと買ってもらったWALKMANとの日々が大失敗と共に始まり、それを見た父が爆笑していた。中学生なのに、泣いた。部活のコンクールが県大会にいけなかった時すら泣かなかったのに、保護フィルムの粘着力がティッシュによって死滅してしまったことと、父に爆笑されたことが悔しくて、泣いた。

それ以来、保護フィルムを貼ることは毛虫と同じくらい、いやもっと嫌いだ。

できることならやりたくない。スマホを買った時に店頭でお金を払ってやってもらったこともある。ただ、貼らないと画面がバリバリになることも経験済みなので、渋々自分で貼って気泡がありえないほど入ることもままあった。

 

今回割れた保護フィルムは、同じ部署の同期に貼ってもらった。配属されたての頃、先輩のスマホの保護フィルムを「俺貼るのめっちゃ得意なんすよね!!」とドヤ顔をしながら貼っていたので、それなら私のも貼ってくれとお願いした。社会人になってお金が入るようになったので、そこそこ値段のする強化ガラスのものを貼りたいなと思っていたところだったのだ。

やる気満々で「いいよ!」と言ってくれたので、電気屋で買った後近くのドトールで貼ってもらうことになった。

箱を開けて中身を取り出すと、同期の顔が少し曇った。

「これ、俺が知ってるやつと違う、、、」

スマホの電源を切り、あーでもないこーでもないと言いながら説明書もそこそこにフィルムをいじくり倒す同期。大丈夫か、、?と心配になりながら見つめている私。

「あ」 思わず私の声が出た。

「これ、今、線入ったんじゃない、、?」

ど新品のガラスフィルムの真ん中、一本線が、というかひびが、走っていた。

彼がいじくっていた時、無理に曲げてしまったようだ。

配属されたて。なんなら出会いたて。お互いの性格や相性がちょっとずつわかってきたような頃。

彼の顔にハッキリ「やってしまった」と書かれた直後、怒涛の勢いで謝り始めた彼、

あまりの勢いになんだか可笑しくなってしまって、私は大爆笑してしまった。仕事終わりのドトールで、必死に謝る彼と爆笑する私はなかなか変な構図だったかもしれない。

さすがに弁償してね、と言ったので直後に買ってきてもらい、今度は説明書を見ながら綺麗に貼ってくれた。ありがとう。

 

まぁ、その数週間後に気づいたら右の角が割れてたんですけどね。

 

 

あの日と同じ電気屋でフィルムを探すと、もうだいぶ型落ちしているようで数種類しか売っていなかった。前のサラサラの手触りのやつがよかったのだが、もうどれだかわからないのでそれっぽいのを買った。型落ちのおかげで当時より値段は下がっていた。

家に帰って、箱を開ける。あの時ドトールで見たものと同じような作りのものだった。説明書を見ながらやってみる。スマホの電源を切りそびれたので、フィルムを貼る時点ですごい通知を開く画面になってしまい気が散った。

いざ終えてみてみると、画面の中央にハンコ注射みたいな気泡ができていた。

めっちゃ気になる。

これだから保護フィルム貼るの嫌いなんだよ。

今回もあの同期にお願いすればよかったかなと思いつつ、今ハンコ注射の気泡が入った画面を見ながらこれを書いている。

 

この間までのフィルムの方がサラサラで使い心地が良かったなぁ、、、