オオカミの口

 

スコーンの横にギザギザと入っている亀裂のことを「狼の口(Wolf's mouth)」というらしい。この亀裂が上手に入っているのが、本場のイギリスでは美味しさの証なんだとか。

こういう言葉にやたらとセンスを感じてしまう。例えば卵白で作るザラザラとして軽い食感のラングドシャは、和訳すると「猫の舌」という意味だ。確かに猫の舌、ザラザラしてるもんね。こういうセンスに溢れた喩えの言葉、好きなのが他にもたくさんあるのだが今回はその話がしたいわけではないので割愛。

 

この世界では、一口にスコーンといっても2種類ある。スタバに売っているような三角形の大きめのものは「アメリカンスコーン」で、アフタヌーンティーの段々のお皿に乗せられている、丸くて小さめなのが「イングリッシュスコーン」だ。(スナック菓子でもスコーンという名前のものはあるけれど、あれは何故スコーンなのかはわかりません、、、)

詳しく調べたわけではないけれど、アメリカとイギリスの発展の歴史がスコーンの形の分岐と関わっているのではないかなぁ。私は三角の方も好きだけど、丸いイングリッシュスコーンが好きだ。かなり好きだ。

といっても実はイングリッシュスコーンはなかなかに売っていない。私の生活圏では出会うことはほぼない。

冷蔵庫で先日のブラウニーを作った残りの無塩バターを見つけた。

 

作るか、イングリッシュスコーン。

 

レシピは探せば探すほど見つかった。この世にはあらゆる食感のスコーンを探究する人が多いらしい。とりあえず初手だし、突発的な衝動からなので一番材料が手頃なものを選んだ。

 

必要なバターは50g。残っているものを計るとぴったり100gだったので、半分に切る。

使うバターを1cm角に刻んで、小麦粉とベーキングパウダーを入れたボウルに投入。そぼろ状になるまで手ですり潰す。

この作業、おそらくスコーン作りの肝なのだろうが、正解がわからない。どこまでやればいいの?これはそぼろ状なの?なに?私の思い浮かべるそぼろ状になったところでやめてみた。牛乳と砂糖を投入。

この牛乳、しれっと入れたが実は期限が二日切れている。なんか、使いそびれていたら切れていた。スコーンで消費しきるかと思ったが、思いの外全然減らなかったので残りは捨てた。

 

混ぜてまとまった生地を平らに伸ばしてたたんで伸ばす、を二、三回繰り返す。麺棒がないので手のひらで伸ばしたが、この作業は完全な無になれるので気に入った。今後、無になりたい時はスコーンを作るといいかもしれない。

満を辞して、型抜き。型がないと出来ないのでは?と思っていたのだが、母がコップとかでもイケると言っていたので言われるがままにチャレンジ。食器棚を物色して、これが一番ちょうど良さそうだと手に取った。

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アドベンチャーワールドで買った、牛乳淹れるとパンダになるやつ。

買ったはいいものの、私が牛乳を飲む生活をする人間じゃなかったが故に今回がデビュー戦になってしまった。こんなことするために生まれたんじゃないと思っているかもしれない。ごめん。ありがとう。心の中で呟きつつ逆さまにして生地にギュッ!とやる。うまい具合に丸く抜けた。いいぞ。

型を抜いた後の生地も、もう一度丸めて伸ばして畳んで型を抜いた。最後に残った生地は適当に丸めて平らにした。

型を抜いた後の生地の側面を触らないことが、うまく「狼の口」を出す秘訣なんだとか。フーンと思いつつ次の工程に目を通す。

「牛乳(分量外)を生地に塗る」とある。

牛乳、全て捨てたが?

諦めて予熱していたオーブンに突っ込んだ。

 

焼き時間はレシピでは15分。

その間にジャムと生クリームを買いに行こう。適当に準備をして家を飛び出す。この時点で残り10分。

コンビニにあるか?と寄るが、生クリームがない。タイムロス。結局小さいスーパーまで向かうことになった。商店街をクロックスで駆ける。生クリームはラスイチだった。危ない。ジャムはブルーベリーと決めていた。

店を出、家へ直帰。マンションのエントランスで香ばしい香りがした。お!これはウチのか?家に入ってオーブンの前に吸い寄せられた。残り26秒。これは、と思ってオーブンを止める。

 

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焦げた。頭が。ちょっとではない。

 

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狼の口」は上手く出来ているものもあった。でも焦げている。

 

粗熱を取る間に生クリームを泡立てる。ハンドブレンダーがあるから楽勝だぜ!と思っていたら各地に飛び跳ねた。泣きながら拭いた。

 

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お皿に盛り付けるとまぁいい感じに見える、、よね、、、?

味はまぁ普通に美味しかった。

あまり膨らんでいないものもあったので、あの工程ですり潰し過ぎなのか、、、?とも思った。

 

そして、今回ではっきりしたことだが、どうやら私の家のオーブンは少し温度が高めらしい。ブラウニーも頭が焦げたし。

オーブンの設定分数を見極めていくことが当面の課題。

 

バターがまだ残っているので、近いうちにリベンジマッチが決まりました。

 

 

 

翌朝、玄関の鍵がかかっていないことに仰天。オーブンに吸い寄せられた時にかけそびれたようだ。いくらなんでも不用心すぎる、、、