無駄な自意識に溺れる
仕事が終わって、用事まで少し時間があった。SNSを見ると、完結まで見届けたweb漫画の原画展を次の用事の場所の近くで開催されている。ちょっと覗いてみようかな、と足が向く。よく見ると今日は作者さんが在廊されているらしい。少し足が止まる。ちょっと緊張するな。どうしようか。まぁ覗いてみて、様子を見よう。そう思って会場に足を踏み入れた。
雑貨屋さんの一角が原画展になっている。入り口からだと死角になっていて見えなくて、でも雑貨屋さん自体はそれなりに混雑している。本がメインの雑貨屋さんで、私も並んでいる本を見ながら気になるものを手にとってみたり、あらすじを読んでみたりした。
原画展の一角にさしかかる。中にはSNSでアップされていたディスプレイと、綺麗な絵と、角に女の人が小さな椅子に座っている。あの人?あの人が作者さん?それとも椅子に座ってるだけの人?よくわからなくて、誰もそのスペースの中にはいなくて、一旦通り過ぎる。他の本たちをみて、チラチラと原画展の様子を見る。作者さんなのかな、、、スタッフさんかな、、、何人かスタッフさんのような人も出入りしているしな、、、、様子を伺っていると、作者さんぽい人が原画展のブースを出て雑貨の類を眺め始めた。え?!やっぱ作者さんじゃない?!お客さんだった?!どういうこと?!?そうこうしているうちに約束の時間は近づいてくる。内心絶対あの人が作者さんだろと思っていて、ただただ私の勝手な自意識が邪魔をして話しかけられなかっただけなのに、その人がブースから出てきてしまった以上またわからなくなった。適当に商品をブラブラと見ているけれど、なんにも頭に入ってこない。でも、展示を見に行ったとて何て言う?言うことある?言いたいことある?頭の中がぐるぐる回る。気づいたら女の人は展示ブースに戻っていて、また椅子に座っている。どうする?行く?
そこで、1人の女性がブースに足を踏み入れた。作者さんに何やら話しかけて、盛り上がっている。わぁ、やっぱり作者さんだったのか。そりゃそうだよな。そのことが確信に変わったと同時に、言いたいことがドカンと頭に降ってきた。本筋とはあんまり関係ないシーンが、すごく綺麗で好きだったこと。そのことをなぜかどうしても言いたくなった。うわ、どうしよう、行く?どうする?またこうやって無駄な自意識で損をするんだなぁと思ったと同時に、足が自然とその方向へ向いた。
ブースに足を踏み入れる。さっき作者さんと盛り上がっていた女性はグッズを眺めている。私もグッズを眺め、絵を眺め、頭の中では声をかけるか否か、激しく回る。せっかく綺麗な絵なのに頭にあまり入っていなかった。いっそ、もういいや、話しかけちゃえ!
「あの、、、読んだんですけど、、、、」
あまりにも第一声が情けなさすぎて、フォーマットになってなさすぎて、人見知り感が溢れすぎてすごい。それでも、あの話のあのシーンがすごく綺麗で心に残ったことは伝えられた。嬉しいですと言ってくれた。よかった、、、そのまま流れるようにイラストの栞を買ったのだった。
それにしてもどうしてあんな第一声になってしまったんだろう。もっとシミュレーションをすればよかった。悔しい。ただのキモい人になってしまった。思えば推しの握手会など、上手く話せた試しがなかったんだった。
ああいう場面でちゃんとハキハキ自分の意見が言える人、そういう人になりたい。