居心地のいい温度で

以前お世話になっていた先輩と偶然会って、退職すると聞いて驚いた。今月末には退職し、有給をひと月消化した後には完全な異業種で働き始めるのだそう。歳はひとつ上だけど、年次は6年も上の先輩。仕事でもかなり信頼されていて、幅広く色々なことを任されていた。かなり悩んだ、思い切った決断だということは容易に想像できる。今はもう別部署なので直接関わることはほとんどなくて、年内には去ってしまうというのは少し寂しい。ひょっとしたらお会いするのも今日が最後だったかも。来月送別会をするそうだけど、呼ばれるのか、、そして行けるのか、、、
転職かぁ、と決断した人の背中を見ると少し思うところはある。地方で働いていた時は結構真剣に視野に入れ、エージェントに相談するまでしていた。とにかく、地方で担当していた仕事から離れたかったのと、東京に帰りたかった。その2つの理由だ。自分からやりたいと言い出して前の部署で異動希望を出し、希望に満ちた瞳で遠い地まで遥々引越したのに。現実は完全に私の性質とは合わない世界でしかなく、仕事自体はそれなりに楽しかったしやりがいはあったのだが、その世界にどっぷりと浸かっている人、特に管理層辺りの方々と接するのがどうしても息苦しかった。大きな仕事終わりの飲み会が嫌で嫌でしょうがなくて、でもどうしても行かないといけないから行ってみると過去の思い出や栄光の話しかしない。知らん人の知らん話が延々と続き、挙げ句の果てには若手へのご苦言が始まる始末。慣れない私がうまく仕事中に立ち回れなかったことに対して、目の前で私の先輩に「お前がちゃんと教えないから」と説教を始めた時が一番しんどかった。先輩は慣れっこで終わった後「ほんと気にしないでな〜」と笑ってくれたが、本来あんなことに慣れるべきではないのではないか、、、兎にも角にも、飲み会で仕事の説教を含む熱くてありがたい話をされると、どういうわけか針の筵にいるような、居心地の悪さを感じてしまう。その前の部署ではコロナ禍で飲み会自体なかったので経験がなく、上との飲み会ってこういうもんなんだろうなと諦めに近い感情で、毎度死んだ顔を取り繕いながら参加するしかなかった。
地方から出て、その仕事からポンっと放たれた。あの地での経験から上の世代との飲み会が正直気が進まなくてしょうがなかったけれど、先日忘年会と延期していた歓迎会を兼ねたものに呼ばれた。行ってみると、なんだかとっても居心地がいい。なんだろう。普通に楽しくて、結構お酒も進んで酔っ払ってしまった。知らん人の知らん話を上の世代の人たちが延々とすることもなく、もちろん説教なんかまるでない。なんならお酌も「いい、いい、いい!!」と拒否された。こんな上との飲み会、存在するんだ、、、、なんだか拍子抜けた気持ちと心が軽くなった気持ちが同居して、酔いも相まって軽いステップで帰宅した。
今の部署の居心地の良さ、なんでなんだろうと考えてみると、たぶんみんな仕事に一定のところでラインを引いているからだと気づく。みんな口では「こんな部署に来ちゃってかわいそうに、、」と笑って言うが、仕事となるときっちりとやる。知識もめちゃくちゃにある。それでも仕事に対して熱すぎず、自分の仕事が一番と思っている感じも、仕事が全てという感じもせず、安心する。久しぶりに息ができている。そうか、私、仕事との距離感をある程度は保ちたかったのか。ライフワークとライスワークを、ちゃんと分けたかったんだ。
もちろん仕事に情熱を持って、熱く語るのもいいと思う。ただ私はこれくらいの温度感の方が、とっても居心地がいい。人には人の、温度感ってことだ。
環境が変わってそういうところにやってきた。だから、とりあえず転職は様子を見ようと思って転職アプリは消した。もう少し頑張ってみようと思えたので。でもこれは私の場合。
去りゆく先輩のゆく未来が、明るいものでありますよう。願うばかりだ。