水が流れる場所

職場のトイレの音姫の消し方がわからない。明らかに後付けの音姫なんだけど、普通の音姫ではなく森の川っぽいせせらぎの音にウグイスの鳴き声まで入っている。ウグイスが鳴いた瞬間面白すぎて1人で笑ってしまった。ただ停止ボタンがなくて、自然に止まるのを待つしかない。それが結構長い。止まる前にでるしかない。
音姫という存在は小学校一年生の時から知っている。小学校のトイレが改装されたタイミングで入学した我々は、入学早々謎の水が流れる音が流れる機械がついたトイレを使うことになった。意味がわかったのはだいぶ後になってからな気がする。ただ小学校のトイレに音姫がついていることに対して母が感動していたのを覚えている。すごいことなんだなぁと思った。今思えばそれよりも、トイレの入り口に荷物を置く棚があったこととか、入るとセンサーが働いてBGMが流れることとかも結構異質なことだったんじゃないかと思う。しかもBGM、階によって違ったりした。低学年が使う低階はかわいらしいオルゴールって感じの曲だったけど、高学年が使う上の階は落ち着いたリラックスできるような音楽が流れていた。あのトイレのBGMは、一体どんな意味があったんだろうか。
中学でも卒業間際にトイレの改装が入って、ホテルみたいなトイレになった。改装前は結構地獄みたいなトイレだったのでシンプルに嬉しかった。改装するにあたって、トイレの標識の生徒公募があったんだけど、一人でこっそりちゃんと考えたものの何となく提出するのが恥ずかしく、スルーしてしまった思い出がある。結果採用されたのが私の考えていた制服のデザインを利用したもので、私も提出していればワンチャンあったのかなと未だに思っている。思春期特有の恥ずかしい気持ちってあるよね。
小中でトイレの改装が入ったものだから、高校のふるーーい和式ばっかりのトイレを見た時にも謎の自信があった。どうせ在学中に改装されるだろうと。タイル張りの床のトイレだったので、トイレ掃除のたびにホースで水を撒いてブラシで磨き、スキージーで排水溝に流す作業を繰り返していた。高校生にもなると上履きのサイズもほとんど変わらないのでボロボロになるまで履いていて、その水作業の時に冷たい思いをしてやっと足の裏に穴が空いていたことに気づいたという謎の思い出。なんだかんだその作業にも慣れて、毎回同じメンバーの女子とテキパキキャッキャと掃除をしていたら、3年間が終わった。あれっ?
古いトイレを掃除する日々は正直今となっては眩しい青春のうちの一つかもしれないけれど、あの頃に綺麗なトイレがあったらもっと美しい思い出になっていたかも。とはいえこれくらいの頃に小学校のトイレの音姫のありがたみを実感していたのを思い出す。
今は別に改装を期待しているわけでもないし、職場のトイレも決して古いわけでもない。後付け音姫もある分にはありがたく使う。たとえウグイスが鳴いたとしても。
てか男子トイレには音姫ってないんですか、今回これを書くにあたって初めて知ったんですけど。