映画を劇場で

 

突発的に髪型を大きく変えたい衝動がちょうど4日前くらいに起こったので、深夜の勢いに任せて美容室を予約した

ここ数ヶ月にわたって髪を伸ばし続けていて、いっそ短くするかとも思ったけれど、そういうことがしたいわけでもなくて、ただただ髪型を変えたいというそれだけの思いだった

カラーかパーマかメニューを見て迷い、今後の維持費と私の勇気を鑑みてパーマをかけることにした

 

具体的なイメージがあるわけでもなく、ただ印象を変えたかっただけだったので美容師さんに「どんな感じで〜?」と聞かれた時は少し困った

結局美容師さんに見せられたゆるゆるした感じのパーマを、取れやすい髪質がゆえにキツめにかけてもらうことにした

 

 

いざ終わってみると、めっちゃグリングリンした髪型に出来上がった

こんな犬いたよな、、とボンヤリ思った

少しパーマが取れてくると美容師さんが見せてきたオシャレな感じになるのだろうか、、、

一抹の不安を感じつつもお礼を言って店を出て、パーマ液の匂いを撒き散らしながら街を歩いた

 

その日は今流行りの映画を観ようと前からボンヤリ決めていたので、時間を調べてから映画館に出向いた

次の上映は1時間後

人気の映画なので席が埋まっていないか心配ではあったけれど、平日の昼間なので余裕で空いていた

真ん中の通路に面した、隣が埋まっていない席を選んだ

 

昼を適当に食べて、劇場に入った

コロナで足は遠のいていたけれど元々映画は好きで、特に院生の頃は気になるのがあると朝でも夜でも空いた時間があれば予約して観に行っていた

今回観る映画は、私が大好きなテレビドラマを書いた脚本家が書き下ろしたもので、SNS上で議論があちこちで起こっている

今の精神状況的に観るのに少し躊躇してしまって、公開からだいぶ時間が経ってしまったけれど、どうせいつかは絶対観るだろうしと思い切ることにした

 

初めて入った映画館

シートの感じは悪くなさそうだなと思った

スクリーンの前がステージみたいになっていて、ああここは舞台挨拶とかで使われるとこなんだなと思うなどして席についた

一つ空いた隣には同い年かちょっと下くらいの帽子を被ったお兄さんが座っていた

 

すると、後ろからどすどすという足音とともに何かブツブツ言う声が聞こえてきた

 

「Gの8はどこですか、、、」

 

そう言っているのがはっきり聞こえた時に、その声の主がダルダルのスーツを着た髪が長めのふくよかなおじさんであること、そしてそのGの列が私が座っている座席であること、8番はその列の真ん中あたりであることを続けざまに理解した

 

目が悪くて座席の列がわかんないのかな、と思ったので、「Gの列はここですね」と声をかけ、真ん中にいけるように道を開けた

お礼を言われたからどうかは覚えてないけれど、苦労をしながら通り抜けたおじさんの右手には駅前のピエールエルメの袋が大量にかかっていた

通り過ぎてから、ほのかに、本来ここで香るべき匂いではない匂いが鼻を掠めて、いや、そんなはずはないだろ、と自分に言い聞かせた

一つ隣のお兄さんの前を全然通れないおじさんを横目で見ながら、というか私もパーマ液の匂いめっちゃしてるんだよな今、と思い出し

お兄さんめっちゃついてないな、、、と他人事ながらに思った

おじさんは上映前、ずっと何かしら動いていて、咳を連発しては声にもならない声をあげ、これはやばい人が来てしまったなと3つ隣の私でも感じた

 

 

上映が始まって、たまにおじさんが身体をよじっているのを感じつつも、内容が面白いというか、いや手放しに面白いとも言えないような色々と考えさせられる映画だったので幸いにも現実に引き戻されずにラストシーンまで来た

 

ラストのめちゃくちゃいいシーン、なんとなく周りから鼻をすする音が聞こえる

スクリーンの中の俳優たちも迫真の演技だ

 

ああ、、、、と思ったその瞬間

 

 

 

3つ隣の席から特大の、ゲップが聞こえた

続けざまに2回

 

 

 

 

 

 

一気に現実に戻ってきてしまい、たぶん2個くらいセリフが耳に入らなかったのではないかと思う

 

物語の最終盤、一番大切なところ

 

見計らったかのようなタイミング

 

 

これは、、、、

新手の嫌がらせか、、、、、?

 

 

 

上映が終わって、場内が明るくなって

なんとなく顔を合わせたくなかったので、おじさんが私の前を通る前に帰ろうとすぐに立ち上がった

 

隣はあのおじさんで、一つ空いた隣の私はパーマ臭い

お兄さんは本当に気の毒だったなぁ

そう思って帰る前に一度ちらっと彼の方を見た

 

 

彼は

私との間の一つ空いた席にめちゃくちゃ自分の荷物を置いていて、めちゃくちゃ足の下にも荷物を置いていて、それなりに快適に過ごしてんな!!と思ってなぜか複雑な気持ちになった

 

 

劇場を出て、階段をおりていると二人組の男子学生が後ろから

「めっちゃいいシーンだったよな!よりによって!!」

「しかもデカいの2回じゃん!!めっちゃおっさんぽいやつ!!!!最悪だったよな!!!!」

 

と大きな声で話しているのが聞こえて、

そうだったよな、わかるよ、私も同じだよ、、、、とパーマ液の匂いがする頭の中で大いに頷いた

 

 

そういえば美容師さんに今日シャンプーしていいのか聞きそびれたな、とボンヤリ思いながら帰りのバスに乗り込んだ

 

 

 

 

(映画に関する感想はもう少し色々考えてから、たぶんここには書かないので語り合いたい人がいたら連絡ください)