汽車の街

 

私は生まれてこのかた、ずっと関東で暮らしている。

それぞれ郊外って感じのところではあるけれども、電車で都心に出られる交通網はある。

どこの駅も、バス停も、大体似たようなものだ。

そう思っていた。

 

久しぶりにした国内旅行の二日目(感染対策はしっかりしたので許してください)。その場所の観光地は初日に車で大体回ったものの、帰りの飛行機の時間まで結構時間があったので、一人で公共交通機関を使って移動することにした。

 

この土地には "電車" が通っていないのだと、初日に案内してくれた現地の友人が教えてくれた。

"電車" ではなく "汽車" なのだと。

 

汽車と聞くと、某少年漫画の劇場版のアレみたいな蒸気機関車をどうしても思い浮かべてしまうのは私だけではないとは思う。

実際に初日に線路を走っている列車を見たが、列車自体の見た目は変わらなくて、まぁ確かに2両編成だねぇという感じだった。

でもよく見ると、何かが違う。

あぁ、あれがないんだ。

パンタグラフ

電車のしくみとかは正直よく知らないけれど、なんとなく用途は知っていたあの筐体の上を張り巡らされている黒い線。全然意識したことがなかったあれ。

あれ無しで走っている。

そうか、これが大きな違いなのか。

 

せっかくだし、というか、結構興味が湧いたので汽車を使って移動しよう。駅は泊まったホテルの近くだったので、問題なく歩いて行けた。

ICカードは使えないだろうなぁと思って改札を探す。

あれ?

ないじゃん。

駅員さんが手で切符にスタンプ押してるじゃん。

大きな駅なのに、こんな感じなんだ、、、、

 

この時点ですでにカルチャーショックを覚え、切符を買う自体かなり久々だな、、と思いつつ料金表をチラ見しながら切符を買い、駅員さんに処理をしてもらってホームへ向かう。

駅のホームは昼過ぎなのに高校生がたくさんいた。なんでだ?

 

とりあえず来た列車に乗り込む。始発駅だったので2両編成だったが余裕で座れた。動き出した列車に揺られながら、窓の外を見る。あれは昨日通った道だなぁとか、乗り心地とかは正直電車と変わらんなとか思いながらボンヤリしていた。

そろそろ降りる駅かなと思っていると、何やら車内アナウンスで整理券がどうとか、運賃箱がどうとか聞こえてきた。

整理券?運賃箱?

整理券なんて取ってない。やばいかもしれない。

運賃箱はどうやら車両の端にあるようで、そこに切符や運賃や整理券を入れるらしい。

やばいか?やばいのかこれは?

とりあえず車両の端に行ってみる。降りそうな人が多少いた。

列車が止まって、人の動向を見る。切符だけを運賃箱に入れている人がいた。整理券なくてもいいのか!

しれっと人の流れに乗って切符を入れて降りた。

そうか、始発駅だし切符買えたから整理券がなくてもどこから乗ってるのかわかるのか。実家の方の公共バスとかと同じ仕組みね。

納得したところでふと思う。整理券と運賃を入れるって、切符すら売っていない駅があるということだ。

というか、列車内で全て完結してしまった。たどり着いた駅は、窓口はあるものの駅員はおらず、もちろん改札もなかった。駅の構内は広い待合室になっており、女子高生が一人だけ座ってスマホをいじっていた。

乗り継ぎのバス停を確認すると、次のバスまで30分以上あった。外は結構寒かったので、待合室に戻って座る。

なぜか3台ある自動販売機の音だけがする。

静かだな、、、、、

 

バスもICカードが使えないだろうし、と帰りの切符を買ってお金を崩した。

待合室で眠くなってきたところでバスが来て、目的地に到着。帰りのバスの時間を見ておこうと思い、反対車線に渡ってバス停の時刻表を見た。

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時刻表、剥がされてるんだが、、、、

 

帰り道を調べても調べても、さっきの駅を経由する経路が出ないわけがようやくわかった。

そんなことある??

 

しょうがないので乗ってきたバスの路線を利用して、かなり時間をかけてターミナル駅まで帰ってきた。

利用したバス停の待合室に、ツバメの巣が3つも作られていたのはまた別のお話。

 

 

全ての旅程を終えて関東に帰ってきた私の財布には、使われなかった帰りの切符が入っている。