数多の選択肢、狭い空

引越しが完了してからもうすぐひと月が経つ。
元々関東の人間だからか、引越してきたギャップというか、そういうものは一切ない。天女の羽衣を着せられたかのように、スッと土地に馴染んだ気がする。むしろ地方にいたことが幻かのように思えてしまう。そんなひと月だった。
引越しが完了した直後に疲労からか胃腸炎になり、数日ダウンするというなかなかな出だしを迎える羽目になった。
引越し直後の体調不良、本当にデバフでしかない。薬を発掘するところからなのだが、もうこっちはフラフラで必死のため、どうにでもなれ!と新しく買ってしまった。初日は絶対熱があったと思うのだが、体温計が見つからなかったので諦めて寝た。だから熱はなかったという認識になっている。会社から赴任期間として休みをいただいており、引っ越した後も4日ほど初出勤まで猶予があったけれど2日くらい体調不良で潰してしまったので当初の片付け予定から大幅に遅れてしまった。
なんなら収納が前の家よりも減ったので、今も片づききっていない。とりあえず箱を業者さんに回収してもらいたかったため、全ての荷物を箱から出して床に並べた。だから今の部屋は結構ひどい有様かもしれない。
どうしたものか、、、、、まぁなんとかなるやろ、、、、、の繰り返しだ。
そんな感じでまだ生活は落ち着いていないのだが、いい感じのスーパーを見つけたりドラストを開拓したり、着々と根付き始めている実感はある。まぁまだ新しく買った家具は届く気配がないので、新生活が完全に整うまでは時間がかかりそうだけど。
久しぶりの東京での生活は、選択肢が一気に増えてビックリする日々だ。地方暮らしでは、イベントや可愛いお店やお菓子、友人と気軽に飲むことなどを諦めて暮らしていた。ことあるごとに関東に帰るのもなかなか金銭的にも休み的にも厳しかったのだ。美味しいボルシチとか生春巻きとか、そういう専門的な類の料理屋さんなんて近くに滅多にないので、好きでも食べられない。しょうがないよね、、とスマホの画面を閉じることに対してストレスも感じなくなってきた頃に、再びの東京暮らしだ。
SNSで見かけて、可愛いし美味しそう、、と思っていたクッキー缶のポップアップストアが乗り換え駅に唐突に現れて買ってしまった。
友人に休日の夜誘われて飲みに出かけ、最中に別の友人からこの後うち来ない〜?と誘われてハシゴをした。
行きたいところに気軽に行ける。食べたいものを数多くから選べる。会いたい人に気楽に会える。選択肢が一気に広がって、休日を無限に予定で詰めたくなってしまう。自制自制、、、、
東京、最高〜〜〜〜!
と思う反面、ビル群の狭い空を見上げ、地方の広い空が恋しくなる場面も多々ある。自転車で通勤して、車を乗り回して山を越えたり、嘘みたいな日々だったな。親しい人たちから離れて、仕事も慣れないものが多くてしんどいこともかなりあったのに、なんとなく思い出されるのはキラキラとした断片的な思い出だけだ。これが思い出補正というやつ、、?にしては補正がかかるのが早すぎやしないだろうか。ひと月前まではまだ向こうに暮らしているはずだけど。
きっとこうして恋しく思い出したり、広い空を思い出したりすることもだんだんなくなっていくのだろう。あの日々から残るのは、キラキラだけなのかもしれない。
でもこの狭い空とは違う、広い吸い込まれそうな空があるってことを知れたのは、いつか私にとって大切なものになるんじゃないかなという予感がしている。