君にお手紙

 

引っ越してきてから1ヶ月と少し経った。

「2ヶ月以内に手紙を書くこと」

空港まで見送りに来てくれた友人とのその約束を果たすには、いい頃合いだ。

そろそろ筆を執ろうかしら、と思いながらふとカレンダーを見る。

あ、もうすぐあの子の誕生日だ。

それならいっそ、サプライズで当日にプレゼントと一緒に送ってしまおう。我ながらいい考えだな、、、と思ってニヤニヤした。

 

実はプレゼントは去年から決めていた。ガラスペンだ。ガラスでできた繊細なペンで、インクをつけながら文字や絵を描く。去年の今頃、彼女から『ツバキ文具店』という小説を読んでから欲しいのだという話をチラと聞いていた。ちなみに私は、その小説がNHKでドラマ化されたものを観て同じようにガラスペンが欲しくなり、大学院を修了する時にわざわざリクエストをして後輩たちからプレゼントしてもらっていた。どれがいいのかわかんないので指定してください、と言われてAmazonのURLを送ったという思い出がある。ワガママいってすまんね。

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(修了した時にもらったガラスペンで遊んだやつ。パンダの足は気になるところではある)

私がもらったのはガラスペン本体とインクが10本ほどセットになっているもので、明らかにインクはプリントされている文字から中国生まれ感が出ている。ちなみに蓋にくっついていなければならないであろうゴム栓が10本中7本外れているため、金属の蓋を開けた後にゴム栓を外す手間がある。その手間をかける際にめちゃくちゃインクが漏れる。これが地味に困るところではある。

そんな手間があることも相まって、長らく引き出しの奥に仕舞われたままだったガラスペン。

今回友人にガラスペンをプレゼントするし、せっかくだし私もガラスペンを使って手紙も書くか、と思いたった。友人にあげるガラスペンは、柄がハーバリウムになっているもの。お花が好きな友人にピッタリだ!とハンドメイドサイトから見つけ出したものだ。すぐ使えるようにインク付きのものを選んだ。たぶん蓋に関するトラブルもなさそう、、、だと思う。注文したらすぐに届いた。

 

さて、プレゼントも用意できたので、あとは手紙を書くだけだ。正直どのインクがどんな色味だったのかも覚えていない。ティッシュを片手にインク瓶のゴム栓を外す。ティッシュがじわーっと赤に染まる。ピンクかと思ったが、どうやらこのインクは赤のようだ。まぁいいだろう、、、と思って、ペン先を便箋の上に下ろす。便箋もこの為に買った花柄のものだ。便箋の上で少しじわーっとインクが広がる。少しインク瓶のフチで落として続ける。カリカリ、、と乾いた音。線を伸ばすと小さくキーッという音が鳴る。文字にするとアレだが、実際には不快な音ではない。

インクの中に金色のラメが入っているので、文字に金箔が混じったような上品さが出る。ラメペンの感じとは少し違うラメ感だ。数行書いた後、思ったよりインクの色が赤で禍々しく感じたので色を変えることにする。色を変えるときは用意していた水を入れたコップを使う。水彩絵具の要領だ。水の中にインクがフワッと溶ける。しっかりと色が落ちたら水分をしっかり拭き取って違う色瓶に。色々な色が使いたくなって、2行ずつ色を変えてみた。

一枚書き終えて読み返す。カラフルだが、所々滲んでいる文字もいくつか。これも味、、、ということにしよう。ただ、文字が小さすぎると滲んで潰れてしまうので、文量が少ない。伝えたいことが書き終わらなかった。そして、私の指先はすごいことになっていた。

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もう、普通のペンで2枚目を書くか、、、、とペンを持ち替えた。ガラスペン、難しいですね、、、、ていうかたぶん、普通のガラスペンはこんなに指汚くならないと思うから安心してほしい、、、ちゃんとしたインク欲しい、、、

 

そうして書き上げた手紙。封筒に軽くイラストも添えて、郵便局で箱詰めしてもらう。日付指定は誕生日当日の夜。予定がある可能性もかなりあるが、昼よりもいる可能性は高いかと思った。予定を聞いて、サプライズを察されたら嫌でしたし、、、、そうして無事に郵送完了。当日が楽しみだなぁ。その時LINEで彼女と別件でやりとりをしていたが、早く言いたくてウズウズした。ダメダメ、サプライズなんだから。

 

 

その2日後、誕生日の2日前。

「プレゼントありがとう!!!」と写真付きでLINEが送られてきた。誕生日の2日前。

ええ????????

指定日配達とは????????

しばらく2人でLINE越しにゲラゲラ笑ってしまった。

とはいえかなり友人も喜んでいたし、誕生日前に届くというサプライズもできてしまったので結果オーライということにしよう。

私にとってもサプライズだったが。

手紙を書くという約束も果たせたので、とりあえず一安心。お返事を書いてもらうという約束はしてなかったな、とふと思ったけれど、手紙を書くの、結構楽しいな〜と思った。また書こ。