イヤホンの巻き方

 

最近ついにAir podsを買った

ずっと気になっていて、先日のAmazonプライムデーで安くなっていたためえいやっ!と買ってしまった

ワイヤレスイヤホンは首にかけるタイプを持っていたのだが、やはりそれ以上にストレスフリーで、着ける度に買ってよかったなぁと実感する

 

とはいえ、長い間有線のイヤホンを愛着を持って使用していたため、こちらも念のためカバンには入れっぱなしになっている

私は絡まらないコードの巻き方も知っているので、カバンに入れっぱなしでも何ら問題はない

 

その巻き方を教えてくれたのは、バイト先の高校生だった

 

 

出会った当時彼女は高校一年生で、私が大学一年の秋にバイトを始めた時にはすでに数ヶ月先輩だった

高校生OKの職場だったので、バイト仲間の半分くらいは高校生だったのだが、その中でもダントツで若く、清楚で礼儀正しい女の子といったイメージだった

しかし、最初の頃は猫を被っていたのか、はたまた年次があがるにつれて成長していったのか定かではないが、気づいたらギャルになっていた

黒くてまっすぐな長い髪は茶髪のウェーブがかかり、ピアスをあけ(職場では禁止だったので、透明の樹脂ピアスをつけていた)、カラコンを入れ、敬語だった言葉がいきなりタメ語になった

でも不思議と不快感はなかった

元々人懐こい彼女だったので、より距離が縮まった感じがした

仕事に対する愚痴は言いつつも、接客では愛想良く完璧な笑顔を見せるので、彼女のファンがついてしまったくらいだった

 

そんな彼女とシフトが被ったある日のこと

 

職場に持ち込める小さい荷物の中に、なんとなくイヤホンを忍ばせたことがあった

休憩所で何かしらを聴くつもりだったんだと思う、あんまり覚えてないけど

勤務が終わり、荷物を出して帰ろうとなった時に絡まりまくったイヤホンが私のカバンから出てきた

 

私が思わず「うわっめっちゃ絡まってる」と呟くと、彼女は

「絡まらない巻き方教えてあげよっか?」

とニヤリと笑った

 

ぜひ教えてほしいと私が言うと、彼女も自分のカバンからイヤホンを取り出した

 

そして、右手で影絵でよく見るキツネの形を作って

 

「まずは〜、手をキツネの形にしま〜す!コンッ!」

 

と、右手のキツネが彼女の声より高い声で鳴いた

 

 

 

 

めちゃくちゃ可愛いな?!?!!?!

 

 

 

めちゃくちゃに可愛いな、、、、、、、、?!?!!!?

 

 

 

あまりの可愛さに目の前がチカチカした

 

そんな致命的ダメージをを受けたままの頭でなんとかその後の説明を聞いて、実践もできた

キツネを作った手でイヤホンの接続部分をつまみ、立っている人差し指と小指に八の字にコードを巻き付けて摘んだ部分を八の字の交差部分に巻きつけるという手法だった

 

彼女のおかげで、私のイヤホンはその後絡まることはなくなった

 

 

それと同時に、あの可愛さがどうしても忘れられない

 

イヤホンを巻くたびに、彼女のキツネが脳内で「コンッ!」と鳴く

 

 

 

私もその後何人かに彼女直伝のイヤホンの巻き方を教えたことがあって、その度に彼女の真似をしてキツネを鳴かせたりしたのだが、彼女のほど可愛くは決して鳴かなかった

そのうえ、私のキツネが鳴くと空気が冷えた

もう私のキツネは鳴くことはない

彼女のキツネが鳴いたから、あんなに可愛かったのだ

 

 

私の大学卒業を前に、彼女は他のバイト先を見つけて来なくなってしまった

「安くするから来てね♡」と言われたけど、結局場所が分からなくて行けなかった

大学卒業後、一度元バイト仲間で飲んだ際に会ったのが今思えば彼女に会う最後の機会だったのだが、夢に向かって勉強しているキラキラギャルに進化していた

相変わらず可愛かった

 

 

 

Air podsに変えたので、イヤホンを巻く機会は大幅に減り、彼女のキツネも脳内から姿を消しつつある

そんな折、LINEの友達リストをスクロールしていると、彼女のアイコンが目に入った

赤ちゃんの小さい足が映った写真

足に巻かれたタグに、彼女の名前が書いてあった

ただ、私の知っている彼女の名字ではなかった

 

 

 

彼女のキツネが久しぶりに頭の中で鳴いた

 

 

笑顔の素敵な人懐こかった彼女が、いつまでも幸せでいてくれるといいなと思う