あの日の約束と飛んだ記憶

スマホの容量がありません、と繰り返しポップアップが出るようになった。たびたび使わなくなったアプリやら写真やら動画やらを消しているけれど、相変わらずデータは蓄積されているらしい。バックアップをとって写真を消す、というのが手っ取り早い策なのはわかるけれど、絶対バックアップという名の倉庫に押し込んだら最後、開かれることはないと思う。バカな顔をしながら、スマホを変えてしまう未来が見えます。
いまのスマホは大学院一年生の今くらいに買ったものだ。あの日のことはよく覚えている。有線のイヤホンを耳に突っ込んでBUMP OF CHICKENを聴きながら、その日の授業の予習をしようと図書館の自習スペースへ赴いた。席をとった後とりあえずトイレに行こうと思い、音楽を流したスマホジーンズのポッケに入れて席を立つ。個室に入ってイヤホンをしたままスマホを荷物置きに置こうとした時。

イヤホンが手に引っかかって意図せず引っ張られ

ポッケから宙ぶらりんのスマホが顔を出し

思いの外長かったイヤホンの線がピンと伸び

水の中へダイブした。

声にならない叫び。

ちなみにその時聴いていたのは『車輪の唄』で、遠距離になる恋人同士の別れの日を歌ったもの。ちょうどラスサビが流れていて

約束だよ 必ず いつの日かまた会おう

というフレーズがやけに現状とリンクしていた。そんな、、、、、
慌てて引き上げてとりあえず音楽の停止ボタンを押す。しかし、当時のスマホもだいぶガタがきており右側面に隙間が開いており、そこから水が入りたい放題だったようで、右側のタッチパネルはもう動作しなかった。右側の数字を使うパスコードの私、終了のお知らせである。
トイレに行こうとしていたことも、予習をしなきゃいけないこともとりあえず忘れ、パソコンに齧りつく。
なぜならその日、大学のサークルの友人とみなとみらいで会う、というホワッとした約束をしていたのだ。
授業が終わったら連絡するね〜という完全ノープランのスマホありきの約束だったため、とりあえず時間と待ち合わせ場所だけ一方的にでも伝えねばならない。
大学のパソコンからLINEにログインしようとするも、普段使っているスマホアプリの認証が必要で断念。Twitterもなぜかその時はログインできず断念。インスタのDM、、、などと色々と考えたが、ここで閃いた。
サークルの溜まり場で彼女の連絡先を知ってそうな子を捕まえよう。
荷物をまとめて一目散に駆け出し、溜まり場を顔を出す。大学3年で引退してから卒業までほとんど顔を出していなかった上、卒業から数ヶ月、新入生も入ってきており知らない後輩ばかり。これは、、、と思った時、2個下の部長を見つけた。ほとんど話したことはない。声をかけるとかなりビックリしていたが、事情を話すと、快くスマホを貸してくれた。彼女の連絡先を知っているか不安だったが、面倒見がよく後輩とも幅広く仲良くしている彼女のことだったので、そこは問題なくクリア。スマホが終了してしまったことと、大体の到着予測時間、待ち合わせの駅などを送らせてもらった。その部長とのほぼ初絡みがこれである。非常に申し訳ない、情けない先輩だこと、、、、、

待ち合わせはというと。指定した駅の改札が2箇所あり、そこまで指定していなくてかなり不安だったが、双方の出口をウロウロしたらなんとか合流できたのだった。めでたしめでたし。

ただ、一番最初に書いたようにバックアップをマメにとる人間ではないため、自宅パソコンに眠っていた大学3年時のスマホをバキバキに割った時にとったバックアップで復元した。そのため、2年間分の写真やらは電子の海に消えてしまいました。一番悔やまれるのは教育実習の時の生徒たちとの写真である。写真は記憶の外付けハードディスク、、、もう手に入れる術はない。未だに、未だにこのことはかなり悔やんでいる。
じゃあバックアップをマメにとるようにしろよって話なんですけど、それとこれとは別なので、、、、