忘れじの束

 

私は結構記憶力がいい方らしい

ただ、それが発揮されるのはかなりどうでもいい事柄にのみで、数式とか年号とか、そういうテストの点に結びつくような記憶ではない

 

学生時代のくだらない会話とか、友人の元彼の名前とか、あそこに行ったのは何月何日だったなとか、そういう類のかなり些細なことを覚えていることが多い

 

でもそれはつまり、私が覚えていないときっと誰も覚えていないことで、誰も覚えていないことというのはそれはもう「なかったこと」と同じなのではないだろうか

私は過去にあったことを「なかったこと」にしないという役割を与えられているのかもしれない

 

と言ってしまうとかなり壮大になって、まるで自分が漫画やアニメに出てくる能力者のような雰囲気になってしまうけれど、ただ単にみんなが覚えていないことを覚えていることが多くて驚かれる、というだけの話

 

 

そんなくだらない記憶の中にも、なんとなく忘れたくないものは結構ある

それらもいつか私の中からすらも消えてしまうかもしれないので、ここに書き残しておこうかなと思う

 

中学の頃、女子に対してはかなり無口な男の子がいた

隣の席になった時のテスト期間、ふとしたきっかけでお互いにテスト期間のお昼は以前放送していた『LIONのごきげんよう』を観ているということがわかった

「何が出るかな〜?」という音楽に乗せてふったサイコロの、出た面に書いてある話をするお昼のトーク番組だ

その日以来、彼はかなりの頻度で『ごきげんよう』の話を私にしてくるようになり、テストも終わりそうなある日に

「おい!昨日 "当たり目" でたぞ!!!」

とすごい嬉しそうな顔をして報告してきた

当たり目が出たこと、報告してくれるんだ、、、となんかすごい可笑しくなってしまった

 

それから彼と話すようになったのだが、口を開けばシンプルなオレ様だったので以降は割愛

ただなんとなくこの記憶は私の中でいい記憶として残っているし、覚えておきたい出来事だ

 

 

こういう、普段はあまりない一言で覚えておきたいものはまだある

 

高校の部活友達と横浜で年越しをした日の話だ

たしか中華街から桜木町駅まで真夜中に歩いていた時で、完全にみんな深夜テンションだった

その中の一人が「あのさぁ、相談したいんだけどさぁ」と言ってきた

彼はクラスに一人はいるような、そこまで口数は多くないけど発する言葉がめちゃくちゃに面白いタイプのやつ

相談とかされることがなかったので、なんだ?と思いつつ聞いてみると

「手を冬に繋ぐ時ってさぁ、手、冷たくない?」だそうだ

彼には2〜3年付き合っている彼女がいた(多分現在進行形)

普段は全然そういう話をしないので、彼女がどんな子なのか、どう付き合っているのかなどはほとんど知らなかった

恋愛経験が決して多くない私になぜ相談してきたのかはわからないが、多分彼も深夜のノリもあったのだろう

それでも普段そういう話をしない人がめちゃくちゃに可愛い相談をしてきたので、私はかなりテンションがあがりながらもちゃんと建設的なアドバイスをしなければとピーンときた

「あのね、私の好きなBUMP OF CHICKENの藤原さんは、『スノースマイル』という歌の中で冬が寒くて本当によかったって言いながら彼女の左手を自分の右ポケットにお招きしています」

とドヤ顔で

恋愛経験豊富じゃないので、出たアドバイスはただの引用だった

すると彼は「米津はそんなこと言ってなかったなぁ、、、、」と言いながら納得していた

 

この一連の流れは『スノースマイル』を聴くたびに思い出してしまう

ただの引用しかできなかったけれど、あの瞬間BUMP聴いておいてよかった〜と思ったりした

その後実際に彼が彼女の左手を右ポケットにお招きしたのかはわからないけれど

 

 

他にも、台風の沖縄で可愛い野球部のマネージャーとホテルの窓を開けて大変なことになった修学旅行の話とか、

最寄り駅の大型ショッピングモールのプレオープンに地元が同じの仲良しの友達と帰りに寄って晩御飯を食べようとしたら、どこも混んでて結局サンマルクで食べたこととか、

2011年11月11日11時11分は生物の実験をしていてクラスの男子が11秒へのカウントダウンをしてたこととか

 

だいぶ経ってるけど忘れたくない記憶がたくさんある

普段忘れててもふとした拍子に思い出すこともある

覚えていなきゃいかない出来事はどんどん増えていくけれど、こういう些細な記憶も大切にしていきたい

 

 

と思っていたらお風呂で顔を洗ったのを忘れて2回洗顔をしてしまった

そろそろ脳がキャパオーバーなのかもしれない