命の危機って普通の人はどれくらい経験するのだろう。
病気とか、事故とか。
私は幸い大事故にあって大怪我!とか
大病もせず20歳を超えることができました。
(まぁ物心つく前に喘息の発作で入院した時はやばかったらしいんだけど)
そんな中でも、
あれって結構やばかったんじゃね?
というのが1つあります。
中学生の吹奏楽部だった頃。
私は打楽器を担当していて、夏のコンクールとか演奏会とか滅びないかなと思いながら日々を過ごしていました。
事件が起きたのは1年生の終わりの定期演奏会。
地元のホールで行う一大イベントでした。
打楽器担当というのは、外部で演奏する際に学校にある打楽器をトラックに詰める作業を朝っぱらからしなければなりません。これがほんとに苦行。
なぜならば一個上の先輩の一人が鬼のように厳しい人で。っていうか気分屋。切羽詰まると周りに当たるタイプ。
私とかノロマだったのでそりゃあもう格好のサンドバッグになるんですよ。
すでに夏のコンクールでエラい目に遭っていた私は、その日は絶対に怒らせないように、怒られないように、いつもより早く機敏に、急いで動こうと心に誓っていました。
その誓いが良くなかった。
二階にある音楽室とトラックを何回も往復した頃に差し掛かった強敵、シロフォン。
簡単に言ってしまえば木琴です。有名なマリンバよりも軽快な音がします。
4人がかりで運ばなければならない上、誰か1人は打楽器担当が入らないと運んではいけない決まり。
他パートの人に持ち方を簡単に教えた後、持ち上げて階段を下ります。
周りの人は他パートで、運ぶのに慣れていない。私は打楽器担当で何回も運んでいる。そして何より私はめちゃめちゃ急いでいる。
歩調が合わないのは当たり前。
階段で足を踏み外したのは私でした。
あ、これ、やばい
って思った時にはもう遅かった。
ガタガタガシャーン!!!という大きな音と
他の3人の手から離れたシロフォンと共に
滑り落ちる私。
ほんの一瞬。
一緒に運んでたラッパの先輩のびっくりした顔が目に映って
気付いた時には階下にいました。
なんかめっちゃ痛かったけど、生きてた。
下唇めっちゃ切れてたけど、身体は元気だった。どこも折れてなさそう。
ほんとに幸いなことにシロフォンも問題なかった。
落ち方がもし悪ければシロフォンの下敷きになっていたかもしれないし(結構重い)、頭も打ってたかもしれない。シロフォンも大破してたかもしれない。
そこで私はひとまず安心しました。
みんなにめちゃめちゃ心配されて、謝りながら立てなおそうとした時、あの先輩がすごい剣幕で通りかかり。
そして一言。
「ちょっと?!??何やってんの?!???」
「大丈夫?!???」
「「シロフォン!!!!」」
終わり。
その後の演奏会が終わるまで、
先輩に事件の腹立たしさを思い出させないようにするため、切れて腫れた下唇をずっと噛んで過ごしました。
その結果下唇を噛む癖がつきました。
今でもたまにやってしまう。
あともう1つ後遺症が。
あの日以来、何かをする前に
危ないやり方をして怪我をするイメージが頭をよぎるようになりました。
例えば、車輪付きの台の上に乗ってそのまま階段を下ろうとして真っ逆さまに落ちたりとか。
大げさに言ってしまえばエドワード・ゴーリーの絵本のようなイメージですよ。
そのイメージが結構鮮明に頭をよぎるたびに
一人で「ヒッ」って思って身震いして。拳をぎゅって握りしめて。
ただ、それだけ。
それだけなんですけど、未だに。
この間自転車のスロープをみて
乗ったまま下って転ぶイメージに身震いしたところです。
これがよく工事現場に書いてある
K・Y (危険を・予知)
ってことなのでしょうか。
わかんないけど、まぁ生活自体に支障はないし
そのイメージを実行したこともないし、
今も元気に生きてるのでオッケーです。
あと、先輩のことをめちゃ悪く書きましたが
彼女のおかげで目上の人に対する接し方などが
身についたので今となっては感謝してます。
あの一言は多分一生忘れないと思うけど。
(終)