実は冬のボーナスで一眼レフカメラを買っていた。ミラーレスだけど。
なぜ今このタイミングで言うのかというと、買った直後からなんとなくずっと多忙が続き、外に持ち出せたことがなかったからだ。
記念すべき一枚目はこの写真だが、ただのベッドサイドテーブルの夜の写真なだけ。ピントもぼやけている。たしか普通に試し撮りをしただけだと思うが、残りの写真も部屋の一角を数枚撮っているだけだ。
先日の汽車の街への旅行で持っていけばよかったのはわかっているのだけれど、なんならその旅に間に合わせるために買ったまであるのだけれど、荷物が増えるのが嫌で直前まで迷って家に置いてきてしまった。荷物が増えるのが嫌な人に、カメラを持つ資格はないのかもしれない。
とはいえせっかく結構な金額を出して買ったのに何も使っていないのはさすがにもったいない。そんなことを思いつつ、気づいたら春が来ていた。
春か。
インスタに数々流れる桜の写真。
桜か。
桜だ!
ちょっと歩いたところに公園があるので、そこにカメラを持って桜を撮りに行こう。幸い明日は予定のない休みだ。午前中にネットで買った靴とベストが届くし、それらもついでに身につけて行こう。
そう意気込んで眠った翌朝。空は青く晴れていて撮影日和というやつだが、なかなか配達が届かない。そんな時に母からメールが届く。「何かが届いたけど何かわかる?」慌てて注文メールを見ると、靴の配達先が実家になっていた。やってしまった。と思った直後にピンポンが鳴り、ベストが届いた。靴は諦めた。
適当に作ったチャーハンを食べ、着替えてベストを羽織り、首からカメラを下げてみる。それっぽい!「それっぽい」と思っている時点で「それ」ではないのかもしれないし、そもそも「それ」ってなんなのかもわかんないけれど、かなり「それっぽい」。ウキウキで外に出て、公園へ向かう。
が、その途中にゆらゆらと揺れる白くてうっすら桃色の、ふさふさとした枝が建物の隙間から見えた。あそこ、桜咲いてるじゃん!何回か行った公園へ向かうルートではないけれど、あっちに寄り道してから公園へ向かおう。足の向きを変えて歩き出す。
すると。
満開の立派な桜がずらりと並んでいた。桜並木だ。
すごい。
結構人もいて、カメラを向けている人も多い。
私も慌ててカメラを構える。
ぜ、全然うまく撮れない、、、、
花をアップにして撮ったりしてみてもなかなか思うようには撮れない。
川が流れていたので水面に桜が写るか?とも思ったけど写っていなかったし、なんなら写真には水面すら写っていない。
鴨がいた。桜が画角にちょうど入らないくらいのポジションにいた。
うーん?と首を傾げながら写真を撮る私をよそに、色々な人が桜を眺めながらニコニコしていた。
「満開だねぇ」「ちょうどよかったねぇ」「明日雨らしいから今日見れてよかったねぇ」と話すマダムたち。
私よりも明らかにお金がかかった望遠レンズを構える、明らかに年下の少年。
桜よりも松ぼっくりに夢中な小さい女の子と、そんな孫を微笑みながら見守り、見守りながら桜の写真を撮るお爺さん。
歓声をあげながら通り過ぎる、自転車に乗ったお母さんと幼稚園生。
春が来たね。桜が満開だね。それだけで嬉しいね。
写真はまだまだ修行が足りないけれど、春に心を躍らせて桜を見上げる人たちの中で同じように桜を見上げられたのは、かなりいい春の始めの迎え方だと思った。
こんなに立派な桜並木のある街、いいわね、、、、
いつ異動するかわからないけれど、この初めて一人で暮らした桜並木のある街のことは、ずっと大切な思い出として残るんだろうな。
桜並木の先の公園は、桜の木はそんなに生えていなかった。
鴨がいた。
桜と鴨。
公園にたどり着く頃には、青い空は雲に覆われてしまった。少し肌寒い。
もう一回桜並木を通って帰った。
青空の方が映えますね。
今年の春もいい春だといいな。
とりあえず実家に靴を取りに行かなきゃ、、、