10年という月日は

 

ずっと使っていたお気に入りの腕時計の留め具が、簡単に外れるようになった。かなり不便なので、直せやしませんかねぇと職場の器用なおじさんに見せると、これは修理に出さんとダメだねと言われた。その足で商店街の老舗っぽい時計屋さんに預けに行った。ロングセラーのシリーズのもので、業者にまだ替えの留め具があったらしい。ベルト全体を交換するのは高価だと聞いていたので、それを免れて一安心。

思えば、この時計を買ってもらってからもうすぐ10年経つ。

高校入学直前に雑貨屋さんで買った可愛い腕時計を、マネージャーの水仕事ですぐにダメにした。いやまぁ外してやればよかったんですけど、案外大丈夫だったので調子に乗ってつけたままでいたら、文字盤がどんどん錆びていったのだった。それからは、小学生の時に姉の真似をして買ってもらったBaby-Gを使っていたのだけれど、何せ小学生の時に買ってもらったものなのでバンドがどんどん経年劣化で変色していく。先輩がストップウォッチ代わりにランニングに持って行ったりしていたのだが、最終的につけるのも恥ずかしいレベルになってしまった。

高3の最後の大会が終わってマネージャーを引退し、もう水仕事でダメにすることもないだろう、と両親がお疲れ様の意味も込めて買ってくれたのがこの時計だった。ソーラー電池の電波時計。値段を見ずに選んでしまったけれど、たぶん結構するやつだと思う。かなり厳選したので非常に気に入っていて、そこからはほとんど毎日つけていた。ピンクゴールドだった文字盤の枠はいつのまにか色が落ちてすっかり銀色になってしまったし、ロングセラーといってもマイナーチェンジはあるようで、今の型は文字盤の3の部分に日付が表示されるようになっているらしい。私のものにはない機能だ。私の時計が私と共に刻んできた10年とは、そういう月日だった。

 

先日、NHKの18祭が放送された。18歳前後の若者を1000人集め、アーティストが書き下ろした曲をみんなで歌うという毎年やっている番組で、今年は数年ぶりの対面式だったらしい。大好きなBUMP OF CHICKENが今年の担当だというので、かなり前から楽しみにしていたし、今年の18歳羨ましいなぁと心の底から思っていた(まぁ対象は17〜20歳だったらしいが)。1000人とメンバー4人が新曲『窓の中から』を歌う最後のシーンで、なぜかボロボロ泣いてしまった。もちろん曲がいいのもあるけれど、自分の18歳だった頃とかを思い出してしまって止まらなくなった。

何にでもなれると思っていて、毎日が楽しくてしょうがなくて、目の前のことに必死だったけれど将来のことも色々と考え始めていたあの頃。結局あの頃ボンヤリ決めた将来の進路とは大きく異なる仕事をしている現在で、あの頃思い描いていたような大人ではないかもなぁとか思ったりして。あの頃の私は、今の私を見てどう感じるのでしょうね。映像の中で、成人年齢が引き下げられて18歳で大人と呼ばれるようになった出演者の悩みが語られていたけれど、いまだに大人の自覚がうっすらとしかしてない私がここにはいて、そろそろ流石にやばいだろ、、、と思った。

年次が変わって、社会人4年目の年になった。今年はあの時計を買ってもらってから10年、18歳から10年経つ。そして、母が結婚した歳になる。いやだからなんだってわけでもないのだけど、自分の人生というのがだいぶ形をもってきたな、という実感が湧いてきたのがここ一年の私で、相変わらず将来のことはボンヤリとしている。それでも、ちゃんと向き合って考えなければならない段階にはなってきている自覚はある。気を抜いていたらあっという間に社会人の時間は流れていくのだな、というのもやっとわかってきたところだ。大人ってきっと、こういうことなんだろうな。あの頃から流れた10年という月日は、私をこんな感じに変えている。

 

時計屋さんから修理が完了したという連絡はまだこない。留め具が直ったら、また毎日あの時計と一緒に時を刻む。あと何年共に過ごせるかはわからないけれど、お気に入りだしかなり愛着もあるので今後も永く、大切にしていきたいなと思う。